<第2章 入試現代文のためにはどう勉強したらよいのか?> 

ここまでは、「入試現代文という教科が受験生にどういう力を問うているのか」について述べてきた。
それでは次に「現代文の成績向上のためにどういう勉強をすればいいのか」について考えていく。

[(i).公式なき科目] 

正直なことを言ってしまうと、「入試現代文という教科には普遍的に通用する公式などはない」というのが実情だろう。
おそらく、入試現代文に慣れた人ほどこのことが身に染みて分かるのではないだろうか。
現代文という教科が否応なくはらまざるをえないはらむこうした曖昧さが、
受験生の入試現代文に対する毛嫌いや、勉強しても無駄な教科だという思い込みや、
「センス崇拝」などの数々の神話を生み出してきたように考えられる。

数学や理科は公式というものが存在し、
それにあてはめれば(あてはめるまでの過程が大変なのだが)答えは(ほぼ)一つに決まる。
地歴は、だいたいの大学の問題なら、用語と流れを覚えてそれを書けばいいだけだ。
ところが、現代文はそういうふうに明確な公式はないし、暗記でも解けない。
こうした現代文の捉えどころのなさが、受験生を不安に陥れる。
「公式もないし、暗記でも解けない現代文に対し、いったいどう対処すればいいのか?」と。

[(ii).現代文の勉強における危険] 

そして、こうした現代文への不安を見透かしたかのように、受験業界はこうした受験生につけこむのである。
例えば、「現代文は誰にでも分かる!」であるとか「現代文にも公式がある!」というようにセンセーショナルにアピールすることで
現代文をあたかも「わかりやすいもの」であるかのように信じ込ませる風潮である。
設問テクニックをあてはめるだけで解けるような安易な入試問題も一つや二つはあるかもしれない。
(講師が捻出した「テク」に合う問題ばかり選んでるから解けて当然だという説もあるが)
だが参考書で設問テクニックばかり身につけたつもりになっていても、
初めて目にする問題文の内容を的確に理解するという根幹をおろそかにしたのでは、現代文の成績は安定しない。

こうした風潮というものは、入試現代文の現実から目をそらし、自分が信じ込みたい「幻想」を現代文に投影するだけにすぎず、
なんら入試現代文に対応する力をつけることにつながってはいないのである。
もちろん現在の現代文講師すべてがすべてこういう人ばかりではないことは言うまでもなく、
現代文の現実を十分理解して良心的に指導する講師もいるのであるが
(大抵、そういう現代文の難しさをわきまえた講師は必然的に厳しくなるので毛嫌いされがち)、
さきほど述べたような、受験生の不安を見抜かして、甘い言葉でそこに付け込もうとする現代文講師もいるのが現実である。
受験生は、こうした現状があることをよく踏まえたうえで、甘い言葉で人をつるような講師・参考書は避けていかねばならない。
こういう甘い言葉につられると、最終的にひどい目に遭うだろう。
そういう結果になったとしても、それはそういう勉強法を選んでしまった自分の責任である。

[(iii).入試現代文のための勉強とは?] 

さきほど私は「入試現代文という教科には普遍的に通用する公式などはない」と述べた。
「では現代文はどうやって勉強すればいいんだ!」と言われるだろう。
入試現代文の勉強の仕方については、先ほども出たように

・読書
・語彙・漢字
・基礎的な方法論の習得
・過去問・問題集で実戦経験を蓄積

これらをコンスタントに積み上げていくことである。

まず読書。これはまとまった量の活字を読んでもついていけるだけの頭の持久力をつけることや、
現代社会においてどういうことが問題になっているのかという背景知識をつけることが主眼である。
さらにまた、文章を読む経験をつむことで語彙量を蓄積する効用もある。

語彙・漢字については、ある程度早い時期に漢字問題集をやっておくのも大事であるが
問題文に出てきた単語をその度にチェックすることも大事である。
「現代文用語集で熟語を覚える」というよりも、「出てきた語をその度に辞書or用語集でチェックする」という方が
普通のやり方だと思うし、その方が語が頭に定着する。

「基礎的な方法論の習得」については>>1のサイトでも方法論習得のための参考書がいろいろ挙げられている。
入試現代文がどのような教科か把握し、どのように問題文を読み設問を解いていけばいいのか
その基本的作法を身につけるためのものである。

方法論習得系の参考書で基礎作法を身につけた後は、それを実際に過去問・問題集で演習をつまないと身につかない。
自動車の運転の仕方を本で読んでも、実際に車の運転をしなければ運転の仕方が身につかない。それと一緒である。
方法論習得系の参考書をやっただけで安心してしまう人が結構いるので、ここは注意してもらいたい。

これら4つのいずれが不足しても現代文の成績上昇にはつながりにくいだろう。

いくら参考書で設問を解くテクニックだけ身につけた「つもり」になっていても、
根本的な読書不足のせいで本文の内容を読んでも理解することができなかったら、さっぱり問題は解けない。
語彙や漢字が足りないのでは本文をまともに読めないし、記述解答もまともな内容のものを書けない。
どれだけ読書量をつんでいても、「現代文は個人の意見を述べる場なんだ」と
現代文という教科を勘違いしてるようでは点が取れない。
基礎的な方法論を身につける参考書をやっていても、その後過去問で訓練を積んでいなければ
経験不足で実戦的得点力は身につかない。

この4本柱を密接に関連付け、本番入試まで絶えず倦まず繰り返すこと。
現代文の力をつけるためにはこれしかない。

<第0章>
<第1章 入試現代文とはどういう教科なのか?>
<第2章 入試現代文のためにはどう勉強したらよいのか?>
<第2章 続き>
<結語>

入試現代文概論
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